集中講座シリーズ:「マハームドラー」の解説

ゲシェー・ソナム・ギャルツェン師からのメッセージ

 「仏の教えの根本たる『自利のための解脱』から、吉祥なる『秘密集会』までを成就すべきであり、すべての修行が完成するには『大印契』である」とグーロ・チェンポにより説かれた『すべての修行が完成する大印契(マハームドラー)』について、パンチェン・ラマ四世(一世)ロサン・チューキ・ギャルツェン著『ゲルク・カギューの宝なる大印契の根本たる勝者の要道』に基づき解説します。
 「大印契(マハームドラー)」という言葉は、日本でもよく知られていますが、その意味は様々あります。印契(ムドラー)には、徴、象徴、印相、印刷、押印などの意味があり、例をあげれば、業と智慧の印契は明妃や母尊、諸法の自性たる印契はあり方の真如となります。また、小乗や大乗に共通の大印契、顕教や密教に共通の大印契など、多種多様な大印契があり、それらの意味を混同しないように理解しなければなりません。
 パンチェン・ラマ四世ロサン・チューキ・ギャルツェンは、前出の著作の中で、この大印契を顕教と密教という二種に大別して説いています。金剛身などの功方便より生じた大楽や光明は、サラハや龍樹、ナーロー、ミティの大印契であり、これは成就や真髄について説かれたもので、無上瑜伽やタントラ部においても真髄であると述べ、「倶生の瑜伽たるカウマ」、「五具足」、「一味」、「四字」、「シチェーのチューの境」、「ゾクチェン」、「中観の見解伝授」など個別に名前は多くあっても、了義の教、証に精通した経験有す瑜伽行者が伺察すれば一密意に至るとも述べています。
 このパンチェン・ラマ四世ロサン・チューキ・ギャルツェンの御言葉の意味を踏まえ、チベット仏教の概論を究極的な無上瑜伽の観点から説明したいと思います。
 今回、パンチェン・ラマ四世ロサン・チューキ・ギャルツェン著『ゲルク・カギューの宝なる大印契の根本たる勝者の要道』の和訳を作成しました。この根本偈とその自註、ギュトゥー寺全集の第7巻、ダライラマ14世法王の解説書という四つの著作に従い、伝授という形で大印契を解説します。
 

戻る

a:1640 t:3 y:1